福島県浪江ひまわり荘

 救護施設は、社会の中で最後のセーフティネットと言われるように重要な役割を持った施設であり、様々な事情を抱えた方が生活をしている。集団生活を行いながら社会への自立を目指すという一方で、入居者の高齢化などの問題から、社会復帰の難しい現状もあり入居者の施設での生活は長期化している。同類の施設は管理面や社会的な位置付けの中で閉鎖的で隔絶されたものになりがちだが、そういったネガティブな側面を払拭すると共に、長期化する施設での生活が日々、変化に富んだものとなるような設計を試みた。

 施設は南北に管理ゾーンと生活ゾーンに分かれており、生活ゾーンは4ユニットを管理しやすいよう回遊動線で繋げる平面構成とした。合理性を考えると均質になりがちな平面計画もズレを作ることで、単調にならないようにしている。その他にも光の取り方(トップライト、ハイサイドライト)、天井高の変化、平面的な抜けなどの建築的要素を散りばめることで多様な空間作りを意識している。

 構造は、RC造の壁に軽やかな木屋根を掛け、木架構を表しとすることで、木の温かみを感じられるような内部空間とした。外観は、遠景の山の連なりを意識し、地域に馴染みやすいよう低い軒先が外周部にくるような屋根がいくつも連なるような形態とし、集会室や食堂といった天井高の高い空間が、そのまま外部に現れることで突出したヴォリュームが建築的アイコンとなるように計画した。

 

所在地:福島県西白河郡西郷村

用途:救護施設

建築面積:3,100㎡

延床面積:2,811㎡

意匠設計:AUM構造設計と協働

構造設計:AUM構造設計

動画撮影編集:早川記録 早川真介