小さな家

 この住宅は施工者であるセンチュリーホームとの間で「小さな家」というテーマを基に、吹抜けで繋がった一体空間、メリハリのある天井高の操作、空間と空間の繋がり方、ディティール、素材感など、小さいながらも広さを感じるような工夫を考えながら設計した。外観に関しても高さを抑え小さくつくることで街に余白をつくりながら美しく佇むプロポーションを意識している。

 敷地は、北面が道路に面し、南面には河川を挟み大きな建物がある。距離が離れているものの、その存在は視覚的な面や採光面でも決していいものではないと感じた。そこで北の駐車場、南の庭というスタンダードな配置ではなく、建物を西側に寄せて配置した。こうすることで道路面から見たときに南北を視線が抜けるようになり、街に余白をつくることができた。室内空間に関しても環境の乏しい南面は閉じ、河川方向や道路などの抜けをめがけて開口部を計画している。

 特に意識したことは、実際に住まう人が感じるであろうシーンをつくることであった。書斎で仕事をしていて外に目を向けると小さな庭に樹木が色づいているのが見えたり、寝室の窓辺から飼っている猫が車の動きを目で追っていたり、書斎の掃き出し窓から入った光がリビングまで漏れ出したり、ふと見上げた時に空を感じるような日常の風景の切り取りなど、そういった様々なシーンを散りばめることで、小さいながらも"暮らし"の中で情感のあふれる空間づくりを目指した。

 

建築面積:54㎡

延床面積:75㎡

写真:早川記録 早川真介