学習教室の循環
かつて学習教室として運営されていた建物がある。学習教室は2011年の東⽇本⼤震災を機に閉じられ、現在建物は築45 年を迎え、経年と度重なる地震の影響で老朽化が進んだこともあり使⽤に⽀障が出始めていた。2020年「早川記録」は運営者の1⼈として、建物運営を引き継ぐことになり、建物の利活用を考えながら、⾃ら⼿を加え、自身が快適・適切と感じる状態へ持っていくことを段階的に進めることを決めた。運営を引継いだ第1期として、⾃分の仕事場・⽣活拠点をつくることで、積極的にこの建物に関わろうと考えた。
この建物はプロにお願いした部分もあるがほとんどを施主自身のDIYで造られている。そのため施工期間中も施主とgifで対話をしながら詳細を決定していった。施工中、施主自身が知人から木材をいただくことがあったり、家具作りを教わりながらキッチンを製作することとなったり、流動的に計画が変化していく中で、いただいた木材や家具が空間の中で対比的に良く見えるように空間のベースをグレー塗装する考えが生まれた。外部側の杉板は、拭取り塗装で完全な塗りつぶしではないため、かたい部分に色が乗らずグレーで存在を消したつもりが逆に木目が強調されるような表情となり、これはこれで面白いと感じた。
元々の南面の開口部は、一間幅の掃出し窓+欄間の開口部が均等に配置されており、たくさんの光が入り込み均一に明るい空間をつくっていた。しかし、均等な窓配置から生まれる均一な明りは凡庸な空間を生み出している原因であると考えた。予算などから大きく手を加える改修は考えていなかったため窓配置はそのままで、上部の欄間窓を隠すように垂れ壁を作り、空間に入り込む光量を抑え、空間が持つ明るさの帯域を下げることで、前述の通り空間をグレーバックとしたこととも相まって、落ち着きのある空間にリノベーションすることができた。
延床面積:62㎡
写真:早川記録 早川真介